修理とは、直すことではない。
父の仕事が、嫌いだった。
若い頃、私は父の仕事のやり方が嫌いでした。
「そこまで直さなくていい。」
父はよくそう言いました。
私は納得できませんでした。
「もっときれいに直せるのに。」
「もっと手を掛けたほうが、お客様も喜ぶはずだ。」
そう思って、父と何度も言い合いになりました。
当時の私は、職人とは技術を尽くす人だと信じていたのです。
でも、年齢を重ね、自分がお客様と向き合うようになって、少しずつ父の言葉の意味が分かってきました。
父は手を抜いていたのではありません。
本当に必要なことだけをしていた。
余計なことをしない。
壊さなくていいものは壊さない。
残せるものは残す。
それもまた、職人の腕だったのです。
先日も、こんなことがありました。
お預かりした仏具の修理で、以前の修理に使われた接着剤が竹ほぞに絡みつき、どうしても外せずにいたのです。
私は「どうやって外すか」ばかり考えていました。
道具を替え、力の加減を変え、それでも外れない。
ふと、父ならどうするだろうと思い、相談してみました。
父の答えは、あっさりしたものでした。
「無理に取らなくてもいい。金箔を押して、きれいに見せればいい。」
私は「どう外すか」を考えていました。
父は「本当に直すべきものは何か」を見ていました。
若い頃なら、反発していたかもしれません。
でもこの日は、素直にうなずいている自分がいました。
あれほど反発した父に、今は自分から聞きに行っている。
相談できる父が今も店にいてくれる。それが、どれほどありがたいことか。この頃、ようやく分かってきた気がします。